キューセン(大潟方言:アカベラ)

私が子供のころから身近な大潟湾にいた。それも、我が家の畑の前の古い石積みの低い防潮堤の付近を泳いでいたのである。この魚の好物はゴカイであり、我が家の前の干潟にはゴカイがたくさんいたのだから理由は明白であった。手製の竹竿で釣り針にゴカイを付けて彼らの鼻先に持って行ったら躊躇せず飛びついてきた。ただ、この魚は縄張り争いをするためか一匹釣ったらしばらく待たないと次の魚がやってこないという特徴があった。

焼いたら香ばしい魚だった

七輪に火をおこし、塩をたっぷりふりかけたベラを網に載せ、団扇であおぐと、やがて、熱気とともに、匂いがたちのぼる。戦後の少年はもとより、付近の野良猫にとってもその匂いは「うまそうじゃな~」と思わせる良い香りなのであった。ほどよく焼けたら皿に移して醤油を振りかけ熱いまま食べてみると、ベラ特有の匂いと味がするのだった。

ベラが釣れる場所

この魚は四国なら陸地に近い波の静かな入り江の干潟と岩礁がまじわるようなところに住んでいる。つまり、主食はゴカイであるためゴカイが住んでいる平凡な入り江にいるのである。しかし、一定の場所にはとどまらず常に移動しながらゴカイを探しているのでどこでも釣れるわけではない。狙い場所は、ゆるやかな潮の流れがある場所である。流れてくるエサを待ち構えている場合もあるのでベラ釣りのポイントとしてはねらい目である。