漁火
子供のころ、夜は怖くて一人ではめったに出歩かなかったので、実のところ「漁火」を見た記憶はほとんどない、それでも記憶の淵をたどると秋の夜に大潟湾の干潟で見た記憶があった。
大潟では、カーバイトランプという手提げの照明灯を用いて「てなが蛸」を採る風習があった。それを体験したのは高校生になってからだったため、地域の人が大潟湾でそういう漁をしているのを遠方から見たのもそのころからだった。
赤とんぼ
我が家の畑には秋になるとどこからともなく赤とんぼがやってきていた。草むらに止まっている赤とんぼは秋の終わりころになると燃えるように赤く染まっていた。子供心になぜそうなるのか教えてもらう人もいなかったのでいつも不思議には思っていた。
夏の赤とんぼは朝から夕方まで飛んでいて止まらないのが不思議だった。そういえば、止まっているのを見かけたのは秋の終わりころだった。
カブト虫
北の脇海岸の西の方にある松林の裏に、どんぐり(くぬぎ)林があって、その傍に大潟から南林、そして北の脇海岸へと通じる小道があった。その林はかぶと虫の産地として子供たちの間では知れ渡っていたが、私がそこでかぶと虫を捕った記憶はない。
夏休み、昆虫採集はいつもやりかけたものの未完成のまま終わっていた。同級生でみごとに完成させる人がいたのには感心していた。