鯉のぼり

1 甍(いらか)の波と雲の波
  重なる波の中空(なかぞら)を
  橘(たちばな)かおる朝風に
  高く泳ぐや鯉のぼり

2 開ける広きその口に
  舟をも呑まん(のまん)様(さま)見えて
  ゆたかに振う(ふるう)尾鰭(おひれ)には
  物に動ぜぬ(どうぜぬ)姿あり

3 百瀬(ももせ)の滝を登りなば
  たちまち竜(りゅう)になりぬべき
  わが身に似よや(によや)男子(おのこご)と
  空に躍るや(おどるや)鯉のぼり

 

  人はもがいているうちに

  泳ぎ方を覚えてきます。

            有川真由美