早春賦

1 春は名のみの 風の寒さや
  谷の鶯(うぐいす) 歌は思えど
  時にあらずと 声も立てず
  時にあらずと 声も立てず

2 氷解け去り(とけさり) 葦(あし)は角ぐむ(つのぐむ)
  さては時ぞと 思うあやにく
  今日もきのうも 雪の空
  今日もきのうも 雪の空

3 春と聞かねば 知らでありしを
  聞けば急かるる(せかるる) 胸の思(おもい)を
  いかにせよとの この頃か
  いかにせよとの この頃か

 

 

  見えざる危機は自分の心です。

  外側からの危機に対して人間は

  割合、抵抗のすべを知っている。

  自分の心に生じてくる

  危機に関しては

  手のつけようがない。

               開高健