自然観察くらぶに戻る

26/06/23、終日航海

23日は、0時から24時まで終日航海だった。

1.にっぽん丸での毎日の船内生活

 豪華客船での船内生活は初めての体験だった。基本的にはリゾートホテルに滞在しているようなものだが、洗練されたクオリティの高いサービスが次々と提供され、単に人生の1ページとしての思い出を刻むだけでなく、できることならまた来年も参加したいと感じてしまうくらいだった。

(1)食事

 にっぽん丸の美食は有名であるが、実際に味わってみると確かにその通りであることが分かった。しかも食事だけではなく、乗客の中で誕生日とか金婚式とかあらかじめ申請しておくと船長主催の祝福セレモニーがバンドの演奏とともにみんなの前で執り行われるというサービスがある。単にケーキが配られるだけでなく、翌朝には本人に記念写真も届けられるという嬉しい心配りがあった。

(2)心身をもみほぐしてくれる広々としたジェットバス(グランドバス)

 個人的にはこのサービスが印象的だった。時間的には、06:00~12:00、15:00~翌01:00、自由に利用できる。入り口には入浴用タオル、カミソリ、バスルーム内部の7セットの洗い場にはシャワー、シャンプー、リンス、ボデーソープ、に石鹸までも備わっていた。入浴後の洗面所にはバスタオル、ドライヤー、ブラシはもとより自由に利用できる高品質の整髪剤が完備されていた。私はもともと風呂が好きなので1日に5回くらい利用させてもらった。

(3)コンサート等

 毎日、20:30~21:30には、ドルフィンホールにおいて、有名芸術家(アーティスト)による歌謡や演奏、時には落語なども日替わりで組まれており、夕食後のひと時を船客が等しく楽しめるようになっていた。

(4)プールの利用

 毎日、07:00~19:00まで、自由に利用できる。児童が利用する時は保護者の付き添いが必要、なお、船内通路ではホテル同様のカジュアルな服装で往来できるが、水着姿では歩けないのでTシャツ、ショートパンツを着用してプールに行き来するように定められている。

(5)船酔いについて

 青年時代には経験がなくても高齢者になると船酔いをする場合もある。しかし、心配は無用だ最近は副作用の少ない船酔い止め薬が開発されており、船内のフロントにも用意されている(無料)一度服用すれば12時間はだいじょうぶなので適時利用するようにした。

(6)その他

 船内数か所に無料喫茶がある、乗客のみなさんはそれぞれ家族だんらんなどに利用されていた。洗濯については大浴場の隣室に数台の洗濯機と乾燥機が備えられていたが、数日の滞在であればそれなりに準備しておけば必要はないと思われた、下着だけなら船室内のシャワーと石鹸で洗えるし干場もある。トイレは船室ごとに洗浄機付の高級なものが備わっており快適であった。携帯電話は寄港地では使えるが洋上では使えない、緊急時にはフロントに連絡すれば対応してくれる。サイフ等の貴重品管理は船室ごとにダイアル式金庫があって個人で行えるようになっていた。

 船室サービスは一流のホテル並みである。ベッドメーキング、室内清掃、冷蔵庫へのミネラルウオーター補充、その他の備品補充も毎日きちんと行われていた。ただし、インターネットは有料となっているし、テレビも洋上なのでNHK衛星放送などに限られるが、騒々しい情報社会を離れて家族とのコミニュケーションを深めたり、オアシスジムで汗を流して健康維持をしたいのであれば十分である。

 

2.明日の小笠原上陸に備えて、船内では小笠原についての予習(講座)が開かれた。

 残念ながら、講座の内容はあんまり思い出せないが、だいたい以下のような話が合ったような気がする。そこで、文章は正確を期するため、小笠原自然情報センターというすばらしいホームページの一部を抜粋させていただきました。興味のある方はぜひ上記センターのホームページをご覧ください。

(1)小笠原諸島の位置

 小笠原諸島は、日本列島南方の北太平洋上に位置し、南北約400kmに渡って散在する島々の総称で、父島、母島、聟島の3列島からなる小笠原群島、火山(硫黄)列島及び周辺孤立島からなります。父島、母島、聟島の3列島は大小30あまりの島々から構成され、すべての島の面積を合わせても約105平方km(伊豆大島は約90平方km)です。

小笠原は、日本列島から約1,000km、マリアナ諸島から約550km離れており、どの島も成立以来大陸と陸続きになったことがない海洋島です。

(2)人とのかかわり

小笠原は、1593年に小笠原貞頼により発見されたと伝えられています。その後、1830年まで定住者はおらず、「無人島(ボニン・アイランド)」と呼ばれていました。現在では、父島、母島の2島に約2,300人が生活しており、それ以外の島々は無人島となっています。

小笠原には空港がなく、定期船「おがさわら丸」で、東京竹芝桟橋から父島まで片道およそ25.5時間を要します。それにも関わらず、ホエールウォッチングやダイビングをはじめ、小笠原の美しい海や特異な生態系に魅せられて、年間約17,000人もの観光客が訪れ、エコツーリズムが進められています。

(3)小笠原諸島の地形、地質

 小笠原諸島は4800万年前に太平洋プレートが沈み込みを開始したことによって、海洋地殻の上に誕生した海洋性島弧です。沈み込み始めて間もない小笠原海嶺下のマントルは高温であったため、広範囲に無人岩(ボニナイト)という特異なマグマが発生しました。ボニナイトは、地球上で唯一単斜エンスタタイトを含む高マグネシウムの安山岩です。プレートの沈み込みが進むにつれて、生成したマグマは化学組成を変化させ、性質の異なる島弧火山が誕生しました。約4800万年前に形成された父島列島と聟島列島、約4400万年前に形成された母島列島、現在も活動中の火山列島と並んでおり、プレートの沈み込み帯における海洋性島弧の形成と進化の過程を、沈み込みの初期段階から現在進行中のものまで見ることができるのです。

(4)小笠原の生物多様性

小笠原諸島は多様な起源の種が混在しているのが特徴であり、植物では「オセアニア系」、「東南アジア系」、「本州系」などが知られています。それらが独自の種分化をとげた結果、小さな海洋島でありながら種数が多く、高い固有種率となっています。前述の陸産貝類の他、乾性低木林を構成する植物では69種(木本のみでは54種)の固有種が確認されており、固有種率は67%(木本のみでは81%)です。

また小笠原諸島は、オガサワラオオコウモリ(CR)、メグロ(VU)、シマアカネ(CR)、カタマイマイ(DD)などIUCNレッドリスト(2008)記載種57種のかけがえのない生育、生息地となっています。鳥類では固有種メグロにより、BirdLife Internationalの固有鳥類生息地域(Endemic Bird Areas of the World)に指定されています。また、北太平洋に分布するアホウドリ類2種と、カツオドリ類、アジサシ類等の亜熱帯性の海鳥12種が繁殖しています。

このように、小笠原諸島は世界的に重要な絶滅のおそれのある種の生育・生息地であり、また、太平洋中央海洋域における生物多様性の保全のために不可欠な地域であるといえます。

 小笠原諸島では、岩脈や枕状溶岩、硫化鉱床などによって当時の海底火山形成過程を再現することができます。この島弧形成は活火山群である西之島や火山列島では今も進行中です。また、貨幣石を始めとする熱帯性動物化石群も見られます。こうした海洋性島弧の形成過程は世界中で起こっている現象ですが、初期段階の地形・地質が地殻変動による破壊を受けず、まとまった規模で陸上に露出しているのは、世界でも小笠原諸島だけです。これは、太平洋プレート上にある海底火山が、フィリピン海プレートに衝突し、その一部を隆起させたためです。

 また、小笠原諸島では古くから地球科学的研究が行われてきており、世界で最も研究が進んでいる地域の一つです。近年の精密地震波構造探査によれば、太平洋プレートの沈み込みに伴う島弧火成活動によって、現在青年期にある伊豆-小笠原弧の地下では、大陸の基となる安山岩質の中部地殻が形成されつつあります。これらの研究により、海洋性島弧が衝突により合体、大型化する過程を繰り返して現在の大陸ができたと考えられるようになりました。

このように小笠原諸島は、海洋性島弧の形成過程をその誕生から幼年期を経て現在進行中の青年期まで観察することができる唯一の地域であるとともに、海洋地殻から大陸地殻への進化の道のりを記憶する地球史の顕著な見本なのです。

(5)世界遺産としての小笠原

 人類共通のかけがえのない財産として、将来の世代に引き継いでいくべき宝物、それが世界遺産です。世界遺産には、文化遺産と自然遺産があり、自然遺産に登録されるためには4つの評価基準「地形・地質」「生態系」「自然景観」「生物多様性」のいずれかを満たす必要があります。日本では「知床」「白神山地」「屋久島」がそれぞれ自然遺産として登録されています。さらに、平成23年6月に新たに「小笠原諸島」が登録され、日本の世界自然遺産は4つとなりました。

 

このページの最上段に戻る