カニ・エビ
1.ワタリガニ(正式名:ガザミ)
ガザミをはじめて見つけたのは家の前の大潟湾の干潟であった。まだ幼かった私は一人で潮がひいて干上がった干潟に裸足で歩いていって小さな生き物たちと触れ合うのが日課になっていた。1cmくらいのヤドカリや3cmくらいの鉄砲エビが私の遊び相手だったのである。ある日、干潟に点在しているゴロ石を何気なくめくってみると、生まれて初めて10cmくらいもある大きなカニがいたのである。それがガザミであった。ガザミは両手のハサミを振り上げて私を威嚇していたのであった。
このカニは瀬戸内海では広く分布している。太平洋岸でも波静かな入り江などでは見かけることがある。塩茹でにして食べる、身ももちろん美味いが黄色いカニミソという部分が最高にうまい。塩茹での塩加減がたいせつで、塩が不足すると生臭くてうまくない、ぎゃくに多すぎるとしょっぱくて味を損ねてしまう。塩加減は海水くらいの濃さがちょうど良い。ガザミの中でも青っぽく爪の大きな種類はタイワンガザミとよばれている↓。ふるさと大潟湾でもよく見かけた。食べ方は同じである。
2.徳島地方では小エビまたは、サルボエビと呼ばれているエビ(正式名:サルエビ)
子供のころからよく食べたエビである。行商のおばさんがいつも売り歩いていた。大きなやつは10cmにも達するが、普通サイズは5cmくらいであった。塩茹でにして熱いのを家族が取り囲んでむしゃむしゃ食べるのが最高の食べ方であった。最近は天ぷらにして食べている。
3.クルマエビ
このように上品で美しい姿のエビこそがクルマエビである。大きいクルマエビは20cmくらいにも達する。かっては大潟湾にも生息していた。特にアマモが繁茂する清浄な砂地の干潟に生存していた。近年は大潟湾の干潟が砂泥化してしまい、アマモとともにクルマエビは姿を消してしまっている。大潟湾に限らず瀬戸内海の多くの干潟がそうなっているのではないかと思われる。従って、流通しているクルマエビは養殖ものである。昔の様に自然環境で生息しているクルマエビは絶滅状態となっているのだ。
塩茹でにすると確かにエビの味ではあるが、今では幻となってしまった天然の20cmくらいもある大きなクルマエビの味は「正に子供時代に一度だけ食べた、大潟湾のクルマエビ特有の味がする」のであるが、最近のスーパーで売られている養殖物にはそれがない。
4.イセエビ
熱帯域の浅い海に生息する大型のエビで、日本では高級食材として扱われる。太平洋岸の岩礁の岩の隙間に潜んでいる。夜行性であるため漁師は夕方磯の周りに網をしかけ、翌朝その網をひきあげて狩猟するのであるが、絶滅を防ぐために禁漁期間を設定するとともに、地域ごとに漁業権が設定されて保護されているという貴重なエビとなっている。
子供のころにはその存在は知ってはいたが滅多に食べたことはなかった。大人になって阿南発電所に就職していたころ、職場での慰安会で椿どまりの民宿に宿泊した時に大きな天然のイセエビの刺身や、みそ汁を食べさせてもらった時の美味しかったことを覚えている。
5.ゾウリエビ
大潟ではセッタエビと呼んでいた。このエビは外見はスマートではないが、ゆでたり焼いたりするとイセエビに似た味がする。漁村の魚屋では普通に売られているが都会のスーパーではほとんど見られないようだ。